Readers Digest(2)

Xantippe, Socratis philosophi uxor, morosa et jurgiosa fuisse fertur.

 

日米コンドームの比較

雑誌のライター、編集者たちは、アゴアシつきの新車試乗会に行って、「まあ、なんてステキな乗り心地」とやり、観光局や旅行代理店からの招待旅行に出かけて、「まあ、なんて素晴らしい国」とやり、グルメ特集でタダ飯を食って、「まあ、なんとまったりとしたお味」とやるくせに、どうしてコンドームについては、実際に使って、「まあ、なんてヌレヌレ・ビンビンのチンマン感触」と書かないのか。
私が見ていないだけなのかもしれないと思い、念のためにオカモトに問い合わせたら、これまで使用感のベストテンをやった雑誌は一誌だけだったという。処女と童貞ばっかりじゃあるめえし、気取ってんじゃねえぞ。

(中略)

ただし、あちらでは「日本ものは小さい」とバカにする傾向もあるそうだ。日本のメーカーによると、「輸出用は大きいサイズにしてあって、小さいハズがない」とのことなので、根拠のない日本人蔑視である。(長さはいずれも変わらない。精子が漏れたり、コンドームが抜けたりしないように、国内で売られているコンドームでも、チンチン以上に長くなっているのだ)。

知人の報告では、アメリカ人は見栄を張って実際のサイズより大きいサイズを買っていく傾向があって、チンポへのコンプレックスは日本人以上に強いと思われる。「日本のコンドームが小さい」などというのも、このコンプレックスの裏返しだろう。まったく、ロクでもないヤツらである。でも、輸出用はしっかり大きくしてあるってことは、やっぱり日本人のチンポは小さいってことなんだなあ。ロクでもないヤツらより、チンポが小さいのは情けないなあ。

松沢呉一「エロ街道をゆく」

 

アメリカのパイロットは安月給

「ほんとなんだ」と彼は言った。「俺たちパイロットの一人が、先月、生活保護課へ食料切符(生活扶助のため政府が発行する食料割引券)をもらいに行ったよ。冗談じゃないぜ。子供が4人もいて、あの給料じゃ、正当な受給資格を満たすんだとさ。アメリカン航空の本部はこれを見て、回状をまわしやがった。パイロットは生活保護や食料切符をもらうなとさ。たとえその資格があっても、だ!もらった奴は首だってんだ。それで俺の仲間は、その足で食料銀行(困窮者に寄付された食料を配布する施設)に直行したよ」

すごい話を聞いたと思った。だが、これは怖いなんてもんじゃない。俺は飛行機に乗りたくなくなった。人間の動物的で原始的な生存本能ってやつが、こう言うのさ―――タコ・ベルのバイトのガキより安い給料の奴が運転する機械で、空なんざ飛んでいられるか!

俺は自分が高度3万フィートにいるとき、パイロットやアテンダントの頭の中が、帰ってから払う光熱費のことでいっぱいだとしたら、心底ぞっとするね。それと、しょっちゅう飛行機に乗る人は、生活保護課で見かける人には親切にした方がいい。―――その人たちの飛行機に乗ることになるかもしれないからさ。

このところの―――特に、しょっちゅう飛行機に乗る金持ちにとっての―――好景気を考えたら、パイロットにドッグフードよりましな食い物が買える位の給料を払ったっていいんじゃないかと、あんたも考えるだろう。今まで俺は飛行機に乗るとき、パイロットが酔っ払っていないか鼻でチェックしていたんだが、これからは、コクピットのそばを通るとき、ドッグフードが置いてないかどうか確認することにしよう。

マイケル・ムーア「アホでマヌケなアメリカ白人」

 

アメリカがナンバーワン

 ・・・・とはいうものの、まだまだ捨てたもんでもない。先進工業国トップ20の国々の中で、俺たちがナンバーワンである項目は、こんなにある!

百万長者の数は、俺たちがナンバーワン。
億万長者の数も、俺たちがナンバーワン。
軍事予算の総額も、俺たちがナンバーワン。
火器による死亡者数も、俺たちがナンバーワン。
15歳以下の子供が銃火器によって死ぬ確率も、俺たちがナンバーワン。
15歳以下の子供が銃で自殺する確率も、俺たちがナンバーワン。
1人あたりのエネルギー消費量も、俺たちがナンバーワン。
石油消費量も、俺たちがナンバーワン。
天然ガス消費量も、俺たちがナンバーワン。
有害廃棄物の排出量も、俺たちがナンバーワン。
記録された強姦件数も、俺たちがナンバーワン。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

アメリカ人がこれほど多くの分野でトップに立ったなんて、プライドで胸が張り裂けそうにならないだろうか?

マイケル・ムーア「アホでマヌケなアメリカ白人」

 

通訳に困る言葉

それで、通訳中たびたび困るのは、日本のホテルにはなぜか必ず「芙蓉の間」と名付けられたホールがあること。会議会場や、レセプション・ホールとして使われることが多い。これをそのまま訳すとロシア語の「フヨーヴィイ」と音韻的に一致してしまうので、無用の誤解を避けたいと、通訳としては苦しみ悶えるのである。
「次の会場は『チンポコの間』(または最低の間)ですので、そちらにお移りください」
なんて、やはり気が引けますからね。

日本人が愛してやまないビールとして、好んで注文する「エビス」は、ロシア語では”fuck”の命令形に相当するから、ロシア人にとっては、突然かなりキツイ冗談を一発かまされたようなものだ。

イタリアに料理留学していた妹が、
「日本ではスープのだしを何でとるのか」
とイタリア人コック仲間に尋ねられ、
「カツオという名の魚の乾物で」
と答えると、一瞬聞き手一同の怪訝な表情と沈黙があった。続いて、連中はドッと笑い転げ、何人かは立っていられなくなってへたり込んでしまうほどの喜びようだったという。「カツオ」は男根を意味するイタリア語の響きに限りなく近いためである。

モスクワにある日本大使館がなぜいつまでもみすぼらしい場所にあるのかと不思議に思っていたが、実は一度ソ連政府からかなり良い物件を紹介されて、日本大使館も移転を考えたことがあった。
イギリス大使館並びの、願ってもない最高のロケーションにある立派な建物をどうかと、ソ連側が問い合わせてきた。国交回復したての頃だから、ソ連政府も日本に気を使ったのかもしれない。
ところが、日本側は候補地の番地を知るなり、即座に迷うことなく断ったという。
「モスクワ市ヤキマンコ通り○○番地」

今度ロシア側に、駐日大使館の候補地として、「渋谷区恵比寿」を勧めてみたらどうだろう。

米原万里「魔女の1ダース」

 

ベトナムの美女軍団

ベトナム語には、類冠詞というのがある。たとえば、樹木を表す言葉には、必ずその手前に樹木を表す「カイ」という冠詞をつける。その後に樹木の名称を言う。柳は、カイ・リョウ。「リョウ」は柳という樹木の種類を意味する言葉だ。同じようにすべての鳥類を表す言葉には、「チム」という類冠詞が先行する。雀は、チム・セエだし、鶯は、チム・ワイン、鳩は、チム・ポコである。

さて、ベトナム舞踊団一行は京都に滞在し、休演日に市内観光をした。季節は光ざわめき緑ささやく麗しき5月。ちょうど平安神宮前の広場に到着したアオザイの色も華やかな集団めがけて鳩の群れが舞い降りてきた。絵のように美しい風景である。
(世話係の)S君は、ここぞとばかりに美女たちに向かって走り寄り、叫んだ。
「チム・ポコ、チム・ポコ」
美女たちも、嬉しそうに応じて、歓声を上げた。まるで、風鈴屋の店先で音色の異なる風鈴が一斉に突風に吹かれて鳴り響いたかのようだった。
「オーッ、チム・ポコ、チム・ポコ、チム・ポコ・・・・・・・・」

米原万里「魔女の1ダース」

 

ゴルバチョフの節酒政策

要するに、この時は酒類ばかりか、あらゆる酒類代替品すなわちアルコールを含有する化粧品類も、自家製ウォトカの原料となる砂糖も軒並み商店の棚から姿を消してしまったものである。砂糖を水に溶かし、そこにイーストを混ぜると発酵して酒になるからだと、ロシア人が教えてくれた。
あの頃、ソビエトで会議などがあって通訳として日本人出席者に同行すると、会議の合間に設けられたコーヒー・ブレイクに、各テーブルに盛られた角砂糖を鷲掴みにしてポケットに突っ込むソ連側要人の姿を何度目撃したことか。

砂糖が店頭から姿を消すと、続いてジャムや菓子が見えなくなった。そのうち歯磨きまでが姿を消した。歯磨き粉にも砂糖が含まれているからだ。
さらに、驚くべきことに、靴磨き用のクリームまでが店頭から消えたのである。靴クリームにはアルコールが使用されている。だから、靴クリームをパンに分厚く塗って置いておくと、靴クリームに含まれるアルコールが万有引力の法則にしたがって少しずつ下りてきてパンに染み込む。十分に染み込んだところで、靴クリームを削ぎ落とし、アルコールが染み込んだパンを食うというのだ。

米原万里「魔女の1ダース」

 

アダムとイブの国籍

ある文化人類学の国際会議でもアダムとイブの国籍について激論が交わされた。どの国の学者も、自分の国の人であって欲しいという願望をどうやら持っているらしい。このあたりは、非キリスト教文明圏の我々にはちょっと分かりにくいのだけれど、とにかくそういう願望が根っこにあるものだから、議論も熱くなる。
まずイギリス人が、
「エデンの園は、絶対にイギリス以外に考えられない」
と言い張る。曰く、
「イギリスは紳士の国だ。林檎が一つしかないとき、何はさておき、まずレディーにお譲りするとは、これぞジェントルマンシップ。アダムはイギリス紳士だったはずです」
フランスの学者も一歩も引かぬ構えである。
「いや、二人はフランス人に相違ない」
と譲らない。
「たかが林檎一個で、男に身体を任せる女なんてフランス人くらいしかいないはずだ」
となかなか説得力のある発言。ところが、そのときまで黙って話しに耳を傾けていたソ連(当時はまだソ連があったのです)の学者が、やおら立ち上がると、自信たっぷりに言い切ったのだった。
「議論に決着をつけてさしあげましょう。アダムとイブはわが同胞だったに違いありません。ろくに着るものもなく裸同然の暮らしをしていながら、食い物ときたら林檎一個ほどしかないのに、そこを楽園と信じ込まされていたなんて、ソビエト連邦の市民以外に考えられますか」
これには、各国の並み居る学者先生方も心から納得し、反論はなかったと伝えられている。

米原万里「魔女の1ダース」

 

悪魔と魔女の辞典

黒い革表紙に金色の文字が彫ってあり、『悪魔と魔女の辞典』とある。パラパラとめくってみると、

   愛ー相手から無料で利益を引き出すのに、相手が対価以上のものをこちらから獲得
   したと錯覚し、トクしたと思わせるための呪文の一種。ただし、呪文を唱える当人の
   ほうが錯覚し、自分のほうが損をしていると思い込む場合も多い。「無償の愛」などと
   わざわざ定語をつけたりすることがあるように、本来は有償なものと考えられている。

   希望ー絶望を味わうための必需品

   思いやりー弱者に対しては示さず、強者に対して示す恭順の印

   謙遜ー自慢したいことを他人に言わせるための一種の方法

米原万里「魔女の1ダース」

 

売れっ子ホストは猿?

ずっと以前、中村は、新宿歌舞伎町の行きつけのホストクラブ「トップダンディ」にて、世にも珍妙な生き物を見た。白いスーツに身を包み、頭は金髪で、どっから見てもホストなのだが、顔はまぎれもなく猿なのである。百歩譲って人間だとしても、進化の度合いは「電波少年」の坂本ちゃん止まり。
「あんれまぁ〜」
当時まだ、世の中に星の数ほど不細工なホストがいるということを知らなかった中村は、その坂本ちゃんホストに驚嘆し、傍らにいたホストに囁いた。
「ねぇねぇ、あの人、誰? ホスト? つーか、人類?」
「あー、あの人は『ID』って店の粋さんという人でね。けっこう有名なホストだよ」
「有名ホストー? あれがー? 猿じゃーーーん!!!」

ホストとは猿でも勤まる職業なのか。呆れたわい。しかも名前が「粋」だって。ウキキの間違いじゃないのか。ええ?
「そんなわけで」と、中村は、くらたまと深澤社長に提案した。
「次はぜひ、『ID』にウキキ・・・・・・じゃなかった、粋くんを見に行きましょう!」
「その人、猿なんですかー?」
ハンサムに興味のないくらたま、大喜びで目を輝かせる。ホストクラブじゃなくて動物園にでも行くつもりでいるらしい。
「いいですねー、猿(←どこがじゃ!)。行きましょう」
「じゃ、『ID』に決定ね」
「うさぎさん、変装しなくていいんですか?」
「いいよいいよ、相手は猿だもん(←ナメきってる)」
「そーですねー。猿には人間の顔、みんな同じに見えますよね」
「客の顔なんか覚えられないだろうね、猿だから」
「猿だもんねー」
「ウキキだもんねー、わははは」

中村うさぎ・倉田真由美「うさぎとくらたまのホストクラブなび」

 

大阪のホスト

「俺、どーしても誕生日に売り上げ稼ぎたくて、自分のおかん(母親)同伴させて、シャンパン一気させたんですわ」
「わははは! ひでぇ息子っ! おかんに営業かけんなよー!」
「いや、おかんも楽しんどったから、ええねん。おかげで俺もナンバー2になれたしな」
「ほぉ、おめでとう! おかんのおかげだね!」
「ところが、おかん、売り掛け(ツケ)飛びやがってんわー! 金払え、ゆうたら、あんた払うといて、やて。結局、俺が自腹切ってん。アホやぁーーっ!」
「ぎゃはははは! サイコー! おかんに営業かける息子もひどいけど、息子の売り掛け飛ばす母親もひど過ぎだぁー!」

中村うさぎ・倉田真由美「うさぎとくらたまのホストクラブなび」

 

大阪までノーブラ

「お待たせしましたぁ〜」
待ち合わせ場所に、息を切らせてドタドタと駆けつけたくらたまは、なんと、中村のブランド物フル装備を嘲笑うかのようなド貧乏カジュアル仕様。いや、貧乏でもいいんだけどさ、あんた、いちおう二泊三日の旅なのよ? ミニリュックに紙袋(しかもシワシワボロボロ)ひとつって、それ、いくらなんでも軽装備過ぎない?
「大丈夫でぇ〜す。替えの下着は持ってきましたから!」
「アタリマエだよっ! つーか、下着しか持ってきてないの? 服の着替えは?」
「大阪で買おうと思ってぇ〜」

ほぉ、現地調達か。金持ちなのか貧乏なのか、よくわからん発言じゃ。ま、いいんですけどね。わしらの大阪行きは、観光でも買い物旅行でもなく、お仕事ざあますのよ。優雅にショッピングなんかしてる暇、あるのかしら? これだから最近の若い子(つっても、くらたま、もはや三十路の子持ちだが)はイイカゲンよねぇ・・・・・・・などと、のっけからバカにしまくった中村であったが、その後、自分が重大な忘れ物をしてきたことに気付いて愕然としたのであった。

なんと中村、ブラジャーして来るのを忘れてやんのーっ! しかも替えのブラジャーも忘れて、大阪滞在中、ずっとノーブラじゃーーっ(←駄洒落)!!!
がぁーーーーーん!!!
いや、まいった。自分にまいりました。フェンディのキャリーケースに、いったい何を入れてきたの、中村うさぎ?
ま、しかし、ブラジャーなくても取材はできる。ノーブラでホストクラブ行くのは初めてだが、ノーパンで行くよりゃマシであろう。よかった、パンツちゃんと穿いてきて・・・・・・・と、前向きに考えて気を取り直し、大阪の地に降り立った中村である。

中村うさぎ・倉田真由美「うさぎとくらたまのホストクラブなび」

 

ホストクラブのナンバーワンはハンサムじゃない

ここのナンバーワンは、歌舞伎町でもその名を知られた渚カヲルという男。ただし、こいつがハンサムかとゆーと、こりゃまぁ微妙な問題で、中村の目にはピアスだらけの「つんく」にしか見えないのであった。つんく、ハンサムですか? 上沼恵美子に似てませんか? ハッキリ言って、オバチャン顔ではありませんか?

それにしてもホストクラブ各店のナンバーワンたちが、どいつもこいつも、必ずしもハンサムとはいえない顔しているのは、いったい何故なのだろーか。これはホント、ホストクラブの七不思議である。それとも、私の美意識が根本的に間違っているのか? みんな、つんくをハンサムだと思っているのか? 嘘でしょ?

中村うさぎ・倉田真由美「うさぎとくらたまのホストクラブなび」

 

鬱積電車

「あらあらだめでしょ。お靴を脱ぎましょうね」母親は子供の靴を脱がせた。
「かわいいお子さんですね」浜村は皮肉を言った。(どこがかわいいものか。猿そっくりだ。馬鹿息子に馬鹿ママ。くたばっちまえ)
「いいえそんなあ」そういいながら福島洋子は鼻の穴を膨らませていた。(そうでしょ、かわいいでしょ。もっと誉めてよ)
しかし洋子の期待を裏切って、浜村はそれ以上何もいわずに立ち去っていった。

 藤本就子は思った。(馬鹿な女だわ。ああいう女がそのうちにぶくぶくと太りだして、結局こういう図々しい中年女になるのよ。無神経、鈍感、社会生活不適応者)
 阿部菊恵は思った。(また睨んどるわ、この女。へん、睨みたいだけ睨んだらええがな。主婦はしんどいねんで。見てみい、あの若い母親。あんな子供一人でおたおたしてるがな。あんたにもそのうちわかるわ)
 西田清美は思った。(もう見てられないわ。なによ、あの母親。あたし、あんなふうにだけはならないでおこうっと。それにあの子供、全然かわいくないわ。あんな子が生まれたらどうしよう。いいえ、そんなはずはないわ。あたしと彼の子供だもの。それにしても窮屈ねえ。いい加減に誰かあたしのこと気遣ってくれたらどうなのよ)
 葛西幸子は思った。(どうしてこうあたしたちの足を引っ張る女が多いのかしら。あの母親にしても、この妊婦にしても、女の自立ってことを考えたことがあるのかしら。ああ、もういやんなっちゃう。これだから男に舐められるのよ。あっ、あの男。まだ例のスポーツ新聞のいやらしい記事を見てるわ。どういう神経しているんだろ)

 山本達三は思った。(隣のおっさん、相変わらず経済新聞をばさばさ動かしやがって鬱陶しいぜ。まったく。それになんだ、ポマードが臭すぎるってんだ。人の迷惑を考えやがれ)
 佐藤敏之は思った。(あの向かいの小娘、またこっちを睨んだぞ。私が何をしたというんだ。私は何もしていない。ちょっと胸のあたりを、あの膨らみを、目の端で見ただけだ。それがなんだというんだ。いつもはいろいろな男にさせるくせに。せせせ、セックスを。自由奔放に。金さえもらえば誰とでもするくせに。電車の中で、ちょっと見たぐらい、なんだというんだ。なんだというんだ)
 中倉亜希美は思った。(すけべえおやじ。いつまでじろじろ見ていやがるんだろ。あの脂ぎった顔。虫唾が走る。あっ、あの学生もまだ見ていやがった。なんてやつだ)
 前田典男は思った。(見えねえかな。見えねえかな。あのねーちゃんのミニスカートの中、ちらっとでもいいから見えねえかな)

 高須一夫は思った。(いい加減にこの婆さん、ほかへ移ったらどうなんだ。俺は動かんぞ。降りる時まで座っているんだ。こっちは働いて疲れているんだ。今の日本を支えている働き手が、電車の中で休んで何が悪い。一銭も稼がん年寄りは、家に引っ込んでりゃいいんだ。現役の邪魔するな)
 田所ウメは思った。(こいつらみんな人間のクズだ。年寄りがこうして立ってるのに、誰も替わろうとしない。こうなったら意地でも席を譲らせてやる。譲るまで、絶対にここを動いてやらんからな)

(中略)

そのガスは警察庁の依頼を受けて作り出した自白ガスだった。このガスを吸い込んだ人間は、いいたいことを我慢するということができなくなるのだ。
(まあいいだろう。知らない者同士が乗り合わせている電車内だ。特に今すぐいいたいことなんて、誰もないだろう)

東野圭吾「怪笑小説」

 

歯医者なんか嫌い

ついでにいうと、オレは歯医者も嫌いだ。
「あらら、こんなになるまでほっといて!」とか「だーめだよ、歯磨きしないとさ」なんていわれるが、オレがここまで虫歯をほっといたから、歯医者が治療して金儲けできるんだろう!

しかも歯医者での治療中、「痛かったら手を上げてください」と言われたから、「すいません、手はあげられないんですけど」と言ったら、「それじゃあ『痛い』って言ってください」だって。そんなこと治療中に言えるわけないだろう! まったく、このまえ行った歯医者は、ろくなもんじゃなかった。

ホーキング青山「身障者・お笑い芸人という生き方」

 

乙武なんか大嫌い

ある福祉のイベントで講演したとき、「オレは乙武なんか大嫌いで、あいつの足をひっぱってやりたいんだけど、引っぱりたくても(手がないから)引っぱれない」っていうブラックなネタに、ボランティアが手を叩いて大爆笑していた。「日本のバリアフリーはこんなヤツが支えているのか」と思ったらちょっと情けなくなったんだけど、「まあ、ウケたんだからいいか」と思い直したことがあった。

ホーキング青山「身障者・お笑い芸人という生き方」

 

呉智英「バカにつける薬」

呉は、「バカをバカと言うことが禁忌とされるようになった」「根源的」原因は、民主主義社会の制度にあるのではないかと疑っている。なぜならば、民主主義とは一言でいえば、バカは正しい、という思想だからである」。こういう正しいことをサラッと言ってのけるところが、呉のいいところである。

ただ、呉は同書(バカにつける薬)を読めば、「バカが治る」と書いているが、それはない。赤塚不二男が「バカは死んでも治らない」と書いているが、その通りだからである。バカが死ねば消滅するだけである。

勢古浩爾「まれに見るバカ」

 

バカは自分から1ミリも外に出ない

さしずめ電車の中で、周囲にわざわざ聞かせるために大声で携帯をかけているバカがその典型である。といえようか。「もうキミは明日から生きないでいいから、そのまま家に帰って首吊って死になさい」といいたい。

勢古浩爾「まれに見るバカ」

 

中村うさぎのバカさ

中村うさぎのいいところは、たとえば「『エルメスのケリーバッグ』とは、何か。その方面に疎い男性読者のために、解説しよう。それは・・・・・単なるハンドバッグである(笑)」という恬淡さにある。ここまでわかっているバカならわりと好きである。近くにいると許せないが、遠くにいると許せる。

   こうして私は、この歳になって、小学生でも知ってるよーな真理を発見したのである。
   すなわち、「お金で幸せは買えません」・・・・・結局、そーゆーワケなのさ。でもねぇ、
   こーゆー真理ってのは、アンタ、口で言うのは簡単だけど、身にしみて体験するのは
   難しいんだぞ。ムナしくなるほど無駄遣いをした人間にしか、これを言う資格はないん
   だい!

ばかばかしい説得力がある。中村うさぎは、勢いで自分の「ケツの穴」を他人に見せたりするバカ女ではあるが、そろそろ40歳(もう超えたか)ということと、身長153センチというあたりで、なんとなく「許してやろう」という気になってしまう。

勢古浩爾「まれに見るバカ」

 

二匹目のどじょうは?

●大麻所持で捕まった勝新太郎の「座頭市仕込みパンツ」を買って着用したら有罪? ●オウム真理教の麻原の「吐くまで飲もうショーコー酒」のアルコール度は何度? など、多くの方から洒落っ気たっぷりな問い合わせをいただきました。阪神タイガースのホームラン王、バース選手をもじって「入浴剤のバースクリン」とやったら、「おかげさまでいい宣伝になりました」とメーカーさんから本物の入浴剤が送られてきたので、これに味をしめて、クルマの広告を作ったんですが、乗用車はついに送られてきませんでした。

マッド・アマノ「新しい歴史狂科書」

 

高級レストランで鼻血

そう。あれは、私がまだ20代の頃の話である。知り合いの男性に誘われて、自分の金じゃ絶対に行けそうにない高級フランス料理を食いに出かけたのであった。スープと前菜を平らげた後、いきなり、
「ぶびゃーーーーーくしょーーーーん!!!!」
あたりに響き渡るクシャミを放った後(それだけでも、じゅうぶん恥ずかしかったが)、膝の上のナプキンで鼻を拭ってみると、な、なんと・・・・・!!!
「げげっ・・・・・は、鼻血・・・・・!!!」

(中略)

トイレの洗面所で鼻を洗い、トントンと首の後ろを叩いても、鼻血は一向に止まる気配がない。しかし、いつまでもトイレに篭っていると、相手の男性に「もしや、ウンコ・・・・・?」などと、あらぬ嫌疑をかけられてしまう!

(中略)

こうして私は、片方の鼻の穴にふたつの鼻くそ大のティッシュを詰めて、ニコニコと席に戻ったのである。だが、息が苦しくて、その後の料理の味はまったくわからなかった。
相手の男性は何も気付かず、食事の後に私をビリヤードに誘い(球なんぞ突いてる場合かってんだよ、ねえ)、車で家まで送り届けてくれたのであった。
「今夜は楽しかったよ」
「ほうれふね(←鼻が詰まっている)」と私は答えた。
「また誘うよ」
「はぇ(鼻血の出てねぇ時にな、と、私は思った)」
「それじゃ、おやすみ」
「ほやふみなはい」
やれやれ、あん時ゃ、大変だったよ。ま、過ぎてみると、甘酸っぱい青春のひとコマ・・・・・なワケ、ねーだろっ!

中村うさぎ「だって、買っちゃったんだもん!」

 

むじんくん

「ああ、むじんくんでしょ? 借りたことあるよ」
件の友人は、コトもなげに答えた。
「初めて借りたのにさぁ、いきなり50万円も貸してくれちゃったよ」
「なにっ!? 50万もっ!?」
私は、色めきたったね。その日、試しに銀行(それもメインバンクの住友銀行)で借金を申し込んだら、「自由業の方は20万円が限度ですね」と、冷たく言われてしまったのだ。銀行が20万円しか貸してくれないのに、むじんくんは50万円も貸してくれるのか!? なんて太っ腹なんだ、むじんくん! 宇宙人のくせに、いいヤツじゃねーか!

中村うさぎ「だって、買っちゃったんだもん!」

 

ウンコ流さん病

「あ、ごめん。俺の後、臭かった?」
先にトイレに行った友人が、きまり悪そうに謝った。すると相手は、ますます微妙な症状を浮かべて、
「うん・・・・・いや・・・・・。あのさ、流してなかったよ・・・・・」
「ええーーーーっ!?」
愕然とする彼を指差して、
「ガーハッハッハ! 天罰じゃ、天罰!」
と、私が狂喜したのは、言うまでもない。
恐ろしい話であるが、これは実話である。「ウンコ流さん病」は、なんと伝染する病であったのだ! しかも空気感染とか接触感染じゃなくて、世にも珍しい「話感染」・・・・・すなわち、話を聞いただけで感染してしまうのである。うーむ、恐ろしい!
私が通関をくぐり抜けて日本に持ち帰った「バリ島の怪」が、早くもひとりの犠牲者を出してしまった。それは、エボラ熱さながらの恐怖であった。しかしまぁ、さすがに、その後の犠牲者は出ていないもようである(たぶん)。

中村うさぎ「だって、買っちゃったんだもん!」

 

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