川柳
Hoc ante omnia fac, mi Lucili: disce gaudere.
| 江戸っ子の生まれそこない金を持ち |
| 江戸っ子は宵越しの金を持たない。というのが粋とされた時代なので、 金を持ってる奴は生まれそこないに違いない、という皮肉とも揶揄とも とれる。そうは言っても江戸っ子も人の子。本当は金も欲しい。しかし 大半の江戸っ子は金と縁のない長屋暮らし。運良く成功して資産を築い た金持ちに対するやっかみも入っているに違いない。 |
| 居ずまいの悪い内儀で売れる見世 |
| 「居ずまい」とは座ったときの姿勢のこと。店の内儀(おかみさん) が横座りに膝を崩してだらしない姿勢で店番をしているのだろう。 着物の裾が割れて白い脚が見えるのが色っぽくて、男客がわんさと 押しかけたというわけだ。 |
| 役人の子はにぎにぎをよくおぼえ |
| 昔から役人は賄賂が大好きだった。袖の下のにぎりと幼児の遊びのに ぎにぎを掛けたもの。役人の子は親に似ていろいろある遊びの中でも 特ににぎにぎが上手である。 |
| 囲いものあたりとなりへ煮ると遣り |
| 囲いものはお妾さんのこと。この場合は特に坊主のお妾さん。坊さん だけに近所の口さがない連中の口を封じておこうと考えて、煮物をす れば向こう三軒両隣へ、下女に命じて配らせたんだろう。 |
| さいちゅうと囲われの下女あそびに来 |
| 坊さんが囲われのところへ来て、今はそのさいちゅう、下女はしかた なく下駄を突っかけて、煮物を配った近所の家に遊びに出かけたとい う話。 |
| 手をとると顔を下げるが女なり |
| 男が手を握ると、女は羞恥心からうつむくものである。 現代じゃ通用しない定義。 |
| にぎられた片手畳をむしってる |
| これも今じゃ見られない、うぶな女の光景。 |
| 女同士どこしかあらを見出し合い |
| 女は同性の姿形を素直に誉めることがなく、どこかしら欠点を見つけ ようとするものである。 |
| 弐三丁出てから夫婦つれになり |
| 昔の日本人は夫婦や恋人がつれだって歩くのを恥ずかしがったり冷やか したりした。だから夫婦の外出のときは、別々に家を出て2,3丁行って 近所の人目がなくなったら一緒になる。 |
| 母の名はおやじの腕にしなびて居 |
| 昔は生きのいい職人だった親父が惚れて惚れぬいて、○○命などと腕に 彫ったものだが、今はすっかり歳を取って、しなびた母親の名前がなん とか読める状態。 |
| 四百ずつ両方へ売る仲人口 |
| 仲人は縁談をまとめるために嘘八百を付く。息子の側と娘の側の両方に 売り込むから、それぞれに四百ずつ売り、合わせて八百というわけ。 |
| くどかれて娘はねこにものをいい |
| 男に口説かれた娘、恥ずかしくて返事に困り、「そんな、急に言われた って・・・どうしよう、ねえ」などと、かたわらの猫に話しかける。 |
| こわいもの見たし生むすめ封を切り |
| 初めて恋文をもらった生娘、嬉しいような恐いような、封を切ろうかど うしようか、でもやっぱり見たくて封を切る。 |
| わが好かぬ男のふみは母に見せ |
| 好きな男からもらった恋文はうれし恥ずかし、人の目に触れぬようにそ っと開いて見たりするのに、好きでもない男からの恋文は、自分で見も せずに母親に見せ、「こんなもの寄越して、いやな奴」などと言う。 |
| くさめまた出そうふぬけな面で待ち |
| くしゃみをして、また出そうだから構えて待ってるとなかなか出ない。 今にも出そうなくしゃみを待ってる顔は誰が見ても間抜けな面(つら)。 |
| しゃくりかと思や蚊をのむひきがえる |
| ひきがえるがのどをひくひくさせているので、しゃっくりでもするのか と思っていると、飛んできた蚊を一瞬で飲み込んだ。 |
| ころされたあくび涙に化けて出る |
| あくびを無理にこらえてかみ殺すと、かわりに涙が化けて出てくる。 |
| 屁をひっておかしくもないひとりもの |
| 屁をひって笑われるのも自分のほかに人が居るから。女が居れば「きゃ あ、いやあね」などと言われてひと騒ぎだが、一人の暮らしでは、おか しくともなんともない。 |
| 屁ひとつで無勝負になるにらめくら |
| 必死の形相でにらめっこをしているのに、その最中に屁が出たら、どち らも思わず笑ってしまって勝負にならない。 |
| 湯でひった屁の玉あごの下へ浮き |
| 風呂の中で屁をすると、丸い泡が浮かんでくる。浮いたところがちょう どあごの下で、そこでつかえてたまっている。浮いてきた泡を指ではじ いたりすると、くさい匂いがぷーんとして思わず顔をゆがめたりする。 ばかばかしくもよくある光景。 |
| くさめしてねこも逃げ出すこたつの屁 |
| せっかくコタツの中でぬくぬくと安眠していたのに、ズドンと一発屁を こかれては、毒ガス攻撃に猫もたまらずくしゃみをしながら逃げ出すし かない。 |